謎解きソルフェージュ
川瀬くん、
牧教授に呼びかけられて、鞠子はコーヒーを淹れる手をとめて、視線をむける。

「頼みがあるんだが・・・」
やや歯切れの悪い、迷うような口調だ。彼にしては珍しい。

「なんでしょう」
コーヒーカップを教授のデスクに置きながら、問いかける。

「お使い、というか、届け物をしてくれないかと思って。千代田区の麹町まで」

ここ一星大学のキャンパスは、国立市にある。

「もちろんかまいませんけど、」
麹町だと何線に乗るのだろう、そして誰に何を、とせわしなく思案する。

本来ならこんなことを頼むのは筋違いなんだが、と前置きして。
「届けてほしいのは、警察から預かっている捜査資料なんだ」

背筋にビンと緊張が走る。

とある連続殺人事件の捜査に行き詰まった警視庁が、牧教授にプロファイリングを依頼してきたのが少し前のこと。
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