謎解きソルフェージュ
だが、いかんせん教授は多忙を極めている。
論文の締め切りに、出版を予定している本の原稿の執筆、学会への出席・・・

プロファイリングは片手間にできる作業ではない。
丹念に捜査資料を読み込み、そこから犯行の輪郭をつかみ犯人像を描いてゆく。
そのための時間が捻出できないのだという。

「だから知り合いに頼むことにしたんだ。警視庁も了承済みのことだ」

「その方が麹町にいらっしゃるんですか?」
話が読めてきた。

教授はかるくうなづく。
「ああ、古い屋敷で一人暮らしをしている。そうとうの変わり者だ」

「教授がプロファイリングを替わりに頼まれるくらいだから、有能な方なんですよね」

天才だ、と教授は端的に表現した。
「努力という言葉を虚しくさせるな」

教授がそこまでいうとは、どんな高名な学者なのかと、鞠子はいくつかの名を浮かべる。
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