謎解きソルフェージュ
「やはり心理学者なんですか?」

「いや、明治文学風にいえば高等遊民、現代語でいうところの、ニートだ。趣味で好きな研究をしている」
心理学の博士号は持っているが、と付け加える。

ニート・・・・

自分の親戚であり、卒業した大学の学部も同じ、と教授は続ける。
「彼の母親が私の従姉妹だから、幼い頃から知っているんだが」

母親が教授と同年輩ならば、まだ若い。同じ大学ということは、つまり東大法学部だ。たしかに頭脳は優秀なのだろう。

「おいくつなんですか」

「今年で二十六歳、だったな、たしか」

若き天才心理学者か。

「名は、ミズノ イズミという。漢字がすこし珍しくて林の下に土と書く埜(ノ)の字だ。水埜 泉」

天才心理学者というより、なんだか恋愛ゲームに出てくる美少女みたいな名前だなぁ、という感想が浮かぶ。
泉は男女両方に使える名だが、やはり女性的だ。
< 17 / 102 >

この作品をシェア

pagetop