謎解きソルフェージュ
自分が警察の極秘資料を託されるのだ。
これが武者震いをおぼえずにいられようか。

鞠子がこんなにも犯罪捜査にこだわるには、理由がある。本当は警察官になりたかったのだ。

鞠子が中学一年生のときに亡くなった父は、警察官だった。
警視庁捜査一課強行班に所属。大卒だがキャリアとはほど遠く、自分の足と勘と粘り強さで実績を積み重ねる、いわゆる刑事(デカ)だった。階級は警部補。

一人娘の鞠子にはめっぽう甘く、忙しい職務の合間を縫って、運動会や授業参観に足を運んでくれた。
鞠子にとっての父親像は単純に「悪と戦う正義の味方」であり、そんな父が誇らしかった。

父との別れは、唐突であまりにもあっけなく訪れた。
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