謎解きソルフェージュ
「それがきみの信念なのか?」


「わたしの———」
表面的な言葉が通じる相手ではないと覚悟を固めて、くちびるを解く。

「亡くなったわたしの父は警察官でした。
その父が折にふれて言っていたことがあります。
犯罪事件の被害者の遺族は、無間地獄に落とされ、その悲しみ、苦しみが消えることはない。
犯人を逮捕し裁きを受けさせることで、その心の傷を少しでも癒せれば、と」

わたしもそう願っています、と言葉を結ぶ。


「そのためにはどんなことでもできる?」
冷たく透き通った泉の瞳の奥に、なにかひらめくものがある。
彼が初めて見せた、感情の片鱗だった。


「わたしにできることがあれば、します」
だからこそ、彼にこの話をしたのだ。大切な想い出を取り出してみせた。


「へぇ、じゃあ、ここに横になって服を脱いで?」
泉があごをしゃくって、ソファをしめす。

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