謎解きソルフェージュ
しかし———

しかし、なのだ。

ぴしゃりと閉めようとして最後に噛んでしまったドアストッパーのように、鞠子をとどめるものがある。

「・・・あなたにはこの事件の犯人を捕まえることが、本当にできるんですか?」

「もちろん立証にはいくつか裏付けをとる必要がある」


ぐらり、と鞠子の心中の天秤が傾いてゆく。
本来は抗わなければいけないそのほうへと———

どうしてこっちへ・・・いやそもそもなぜ、こんな選択を迫られることになったのか・・・いつの間にか———


「・・・正直、わたしの身体にそれほどの価値があるとは思えませんが・・・」
逃げの手を試みる。

「身体というより貞操かな?」
大切なものだろう、と畳みかけられ、不承不承うなづく。

「互いに大切にしているものを明け渡すことになるわけだ」
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