謎解きソルフェージュ
「たしかに受け取った」
神妙ともいえる態度だ。


「ぁ、いえ・・・」


すこしずつ頭が冷えてくる。
出来事だけを切り取れば、自分と目の前にいる相手の口と口が一瞬触れた。
それだけのことだ。

それに付随する意味を考えるのは、止そう。少なくとも今は。


「・・・とても牧教授には報告できませんね」

自嘲をこめてつぶやく。
こんなことになろうとは・・・

「きみは牧教授を知らない」
泉が返した。

どういう意味だろうと思ったが、もう問うことはしなかった。
< 61 / 102 >

この作品をシェア

pagetop