謎解きソルフェージュ
「ども・・」

例によって、どうでもいい、といった口ぶりだ。

ともあれ、足を進める。

どうぞ、という言葉と手ぶりで、前と同じソファにあさく腰を下ろす。
今日の彼は、ピンストライプのシャツにチノパンという格好だ。

「お茶でも飲む?」

泉の言葉に面食らいながら、「ぁ、いえ、結構です、おかまいなく」と答える。

「ふむ」

それ以上は勧めてこなかった。来客にお茶を淹れる水埜 泉。おそろしく想像しにくい。

これから起こるだろうことも、想像しにくい、というか想像したくないのだけど。

冷たい底なし泥に落とされたようだ。全身が重く冷たいものに囚われ、抜け出すことができない。

「・・・お聞きしたいことが、あります」
くちびるをこじ開ける。

「なんなりと」

「水埜博士の信念、とはなんなのでしょうか?
どうして犯人が分かっていながら、言おうとしなかったんですか?」
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