謎解きソルフェージュ
言ったとおり、そんなご大層なものじゃない、膝のうえで組んだ指に目を落とし泉はそう口にする。

その視線をつとさまよわせ———

「俺に人を裁く資格はないということだ。
その責務を負っている裁判官じゃないし、靴底をすり減らして捜査にあたった警察官でもない。ましてや神じゃないしな。
寝っころがって、他人が苦労して積み上げた捜査資料を横から読んだだけだ。
それだけの人間に、———四月朔日 和也(ワタヌキ カズヤ)を断罪する資格がはたしてあるのかと自問するとな・・・」

今でもないと思っている。そう言葉を結んだ。


『都内広域連続刺殺事件』通称、卍殺人事件。
重要参考人、四月朔日 和也の身柄は検察庁に送致され、勾留されている。

第一の犠牲者四月朔日 美也の兄であり、その後の三人の殺害事件に関与した容疑だ。

取り調べには諾々と応じているという。
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