謎解きソルフェージュ
動機は怨恨。妹、美也を殺された復讐だ、と泉は誰ともなく語る。

美也は富樫 道夫に殺害された。

ファミリーレストランのウエイトレスだった美也に一方的な思慕を募らせていた富樫。
彼女が短大卒業と同時に、アルバイトを辞めて引っ越し、自分の目の前から消えたことで、その凝った想いは憎しみに形を変えた。

———逃げた、勝手に、勝手に、勝手に、俺になにも言わず、俺のものなのに、俺の、俺の、許さない、許さない、殺す、殺す、殺す・・・・


おそらくはなにも分からないまま、どうしてと問うこともできず、美也は凶刃に倒れた。


和也は同一犯による連続殺人に見せかけ、妹の殺害に関与した者を次々と自らの手で葬った。

それが事件の輪郭だ。


なぜ、は鞠子のなかに渦巻いている。
そのひとつひとつを問うことを、どうやら泉は許容してくれるようだ。

「・・・どうして、それが分かったんですか?」

「俺に言わせると、なんで分からないんだろうと思うんだが」

嫌味に聞こえないのは、純粋に本音だからだろう。
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