謎解きソルフェージュ
そして警察に嘘の証言をする。
犯人は、細身で長身の若い男性でした———

その人物像はそのまま、四月朔日 和也自身のものだ。

富樫道夫を容疑者から外し、その後の殺人者＝自分、との矛盾を生じさせないために。

大学院を休学した和也は、富樫道夫に狙いを定める。
富樫が外出中、彼のアパートに侵入して待ち伏せし、帰宅したところをブラックジャックで殴打。
昏倒したところで手足をしばり、口を粘着テープでふさいだ。

意識を取り戻した富樫を尋問する。

皆本 弘人に紹介され、中里 千香という女性から美也の住所を買った、と富樫はしゃべった。必死で命乞いをしながら。

そして和也は富樫を手にかける。富樫が美也を殺害した、その同じ凶器と同じ手口で。

それは途方もない精神力を要する行為だ。
目を合わせれば、口をきけば、それだけでも人は情を感じてしまうものだ。
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