謎解きソルフェージュ
仕上げに遺体のそばに、卍の血文字を描きつける。

連続殺人事件が幕をあける。

富樫と皆本 弘人の接点は、競馬場だった。

富樫はほぼ毎週末競馬場に通う競馬ファンであり、皆本もそれほど熱心ではないが、競馬好きだった。

そしてふたりともいわゆるパドック党だった。
馬体の具合や馬の調子を判断するために、いつも同じ位置から、双眼鏡を手にパドックを見る。
その場所が、富樫と皆本は同じだった。

肩を並べるように双眼鏡をのぞいていれば、自然短い会話も交わすようになる。

「四番の馬、よさそうだな」
「最近あまり勝ってないけどねえ」
「今日は締まってる感じなんだよな」

勝った日には、帰りに一杯。それぐらいの関係だった。


———探してる女がいるんですよ。

例によって皆本の、「アブナい方面にもコネがあるんで・・・」という語りにつられて、富樫は美也のことを口にした。
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