謎解きソルフェージュ
泣かないでよ、と泉が言う。

「俺が泣かせてるみたいじゃん。って・・そんなようなもんか」

感情の波に、すこしだけ理性というか羞恥が戻って、鞠子は鼻をすする。
はた目にどう映るか気になってくる。
痴話げんかや別れ話をしているカップルに見られるのは、やっぱり恥ずかしい。

カウンターのほうから、ちらちらと視線を感じる。
仲良く同じメニューを注文していた食べていたのに、途中から連れの女性が泣き出したら・・・それは奇異に思うだろう。

無理にまぶたをごしごしとこする。
今日は、そういえば、アイラインを引いてマスカラも塗ってきたのに。ウォータープルーフじゃないから、パンダみたいな目になっているかもしれない。
手鏡を出して、確かめる気力はなかった。

「・・なん・・っで、オムライスを・・注文、した、んですか」
しゃくりあげながら訊ねる。
< 85 / 102 >

この作品をシェア

pagetop