謎解きソルフェージュ
これしかないと照準を定めて、残りの受験生活を駆け抜けた。
そうして晴れて、一星大学心理学部に入学したのだ。

四年次に志望したのは、むろん牧紀明教授の犯罪心理学ゼミだ。
牧教授が教鞭をとっている、というのが一星大学を選んだ理由のひとつでもあったのだ。

牧教授は犯罪心理学の分野で名を知られた人物であり、しばしばメディアにも登場する。
その経歴は輝かしい学歴エリートでありながら、異色でもあった。
牧教授は元警察官なのだ。

といっても鞠子の父のような叩き上げではなく、旧帝大卒のキャリアだが。
警察官僚として約束された道を歩みながら、大学院で犯罪心理学を修め、FBIにも一年間留学している。
そして、警視庁を退庁。エリート官僚の道をあっさり捨て、学問に生きることを選んだのだ。
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