謎解きソルフェージュ
無傷の小学生と、片目の眼球破裂および、足を靴ごとナイフで刺し貫かれる重傷を負った青年。
どちらが被害者とも、判断しかねる状況だった。

泉は、相手はおそらく小児性愛者であり、車中かもしくは連れ去って性的暴行を加える目的だった可能性が高いと説明してやった。
またその種の犯罪は再犯性が高く、更生が困難なことも補足した。

だが刑事たちは泉の話を理解できなかったし、理解しようともしなかった。

相手の男は二十歳になったばかりの予備校生で、前科はなく、厄介なことに代議士の息子だった。

感情をみせず、口の利き方も選ぶ言葉も妙に大人びた不気味な子ども。

児童相談所、という単語がささやき交わされるなか、泉はひとり冷めていた。

バカどもめ。
調書をとった刑事は、漢字を確かめもせず、『水野』と記入していた。
『水埜』だと知ったら、その足りない脳みそでも、取るべき態度を考えただろうに。
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