謎解きソルフェージュ
階級はなんですか、と試しに訊いてやった。

一瞬目を見開き、
「警部補だ」
素直に返事が返ってくる。

その年齢で、ということは、ノンキャリアか、と当たりをつける。
そもそもキャリアが、こんな子どもの取り調べを担当するわけないか。

「警察官の階級を知ってるの?」

だいたいは、と控えめに答える。

「それはすごいな」
目の前の中年男性は、小学生に向かって感心したように頷いてみせる。

「怖くはなかったかい」
とその川瀬警部が訊いてきた。

泉はだまって首を横に振った。

「どうして怖くなかったの? 相手は刃物を持っていたんだろう」

「声も身体も震えていたから。肩に力も入っていて、ただの脅しで本当に刃物を使う気はないと判断できた」

取り調べの基本テクニックはアメとムチ。強面が威圧し、優男が懐柔する。
この川瀬なる警部補は、取り調べに置けるアメ役なのか。
< 96 / 102 >

この作品をシェア

pagetop