その灯火が消えるまで
「でねー」
「…おい」
もうかれこれ30分くらい歩かされている。
俺はもはや家への道の記憶を失った。
この女はマシンガントークを続けるし。
「お前、俺の名前聞くとか、自分の名前教えるとかしろよ。
相手の素性も知らねーで一緒に歩き回るとかおかしいだろ」
「………へ?」
女の子はポカンとして俺を見上げる。
そして、今気付きましたという風に。
「ああ!」
そう言ってにっこりと俺を見上げた。
「私、梶原結灯(かじわらゆうひ)!
ユウヒは、結ぶに灯すって書いて結灯」
「…変な名前」
そう言うと女の子、結灯は目を細める。
「お気に入りの名前なの」
「ふーん」
「た…じゃなくてっ、君の名前は?」
「……朝倉貴也(あさくらたかや)」
「たかや」
ふふ、と楽しそうに笑う結灯。
(何がそんなに楽しいんだか)