その灯火が消えるまで


そうして今のご主人の家に連れていかれて、一緒にお風呂に入って。


その家が、僕の新しいおうちになった。



前の家に帰っておかあさんに会いたいって思ったりもしたけど。



今のご主人とそのママが優しくて、
一緒にいて楽しくて。

前の家のあの女の子も怖いから。



今のご主人と一緒にいたいんだ。





それから、僕は『蛍太郎』って名前をもらった。


あの子がつけてくれた名前。



あの子は、僕とご主人が夜の散歩に出るとよく会った。



『けいたろー!』


満面の笑顔で、僕の名前を呼んで、抱きついて、撫でてくれる。




でも、何度か会う内に気付いちゃったんだ。


抱きついたあの子の音。

ご主人に抱きついたときの胸の音よりも、
遅くて、小さい。



近いうちにいなくなっちゃうんだ。




なんでか、そう思ったんだ。





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