その灯火が消えるまで


そして、次は真っ白な建物の中に連れていかれた。



小さな部屋に入ると、あの子が寝ていた。



『蛍太郎』


前よりも弱々しくて、小さな声で僕を呼んだ。


その手は僕の顔を撫でて、

前のように抱き寄せた。




でも、全然力がなかった。



だから僕は自分から鼻を擦りよせた。




あの子はやっぱり、僕の毛に顔を埋めて、泣いていた。




がんばれ、がんばれ



僕は鼻を何度も擦りつけて、あの子を励ましてあげた。






僕とご主人が帰る前、その子はもう一度僕を抱き寄せて、僕の首輪の、喉の前辺りに紙を入れた。





あの子を見ると、




『ひみつ』




そう、小さな声で言って、ご主人が見ていないときに人差し指をたてて、僕に笑った。




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