その灯火が消えるまで
そして、2年前の今頃。
ご主人は目の周りを真っ赤にして帰ってきた。
きっと、あの子がいなくなったから。
夜空に浮かぶ星のひとつになったんだ。
その夜も、ご主人は僕の紐を引いて、
夜の散歩に出た。
そうして僕を見てやっと、僕の首輪に挟まれた紙を見つけた。
それを出してしばらく見てから、
急に走り出した。
その日はルートが違った。
田んぼの縁を降りて、用水路を飛び越えて
また坂を上がる。
ご主人は何かに惹かれたように、一心にひとつの方向へ向かう。
『ワン!』
ご主人どうしたの?
そう呼び掛けたけど、
『頑張れ蛍太郎』
そう言って微笑んで僕を見ただけだった。
そうして、頂上に辿り着いた。