純情シンデレラ
「事故に遭って、奇跡的に助かったけれど・・・お医者さんからは、恐らく子どもは産めないと言われたんです。そのあたりの損傷が、ちょっと激しかったみたいで。7・8歳の頃は、それがあまり現実味を帯びてないというか、“あ、そっか”くらいにしか思ってなかったんですけどね、年を取るにつれてだんだん分かってきました。松本さんは多少医学の知識をお持ちだから、思いきって言いますけど、私、初潮が来たのも15歳と遅い方だったし、来たら来たで、薬が効かないくらい酷い痛みを感じることがあるし、偏頭痛もよく起こる。傷は治ったかもしれないけど、体はまだ、痛みを抱えているんです。だから・・こんな私と結婚はおろか、おつき合いをしたい人なんていないでしょう。両親、特にお母さんは、“そんな考え間違ってる”って言うけど・・そういえば、最近は言わなくなったけど。とにかく、それで私は、事務系や情報処理の資格を取ったり、ブラインドタッチを習得したんです。一生独身でいるからには、いつまでも、どこででも自分でやっていけるように」と言ってる間に、私たちはつるかめ食堂に着いていた。