純情シンデレラ
お母さんの働く時間と収入が減ったことで、今度は自分が稼ぎ頭にならなければ、と決意したお父さんは、執筆活動を増やしてコンテストにも盛んに応募し、本当に少しずつではあるけれど、「小説家・見上敦」の知名度を上げていった。
書き上げた原稿を失くしてしまうという、とんでもないアクシデントがあったものの、結果的にはそのおかげで「日暮警部」がブレイクしたのは、私が14歳のときのことだ。
「日暮警部」がブレイクし、それがシリーズ化されたおかげで、私たちはようやく、お父さんが書く小説だけで、十分過ぎるくらいに暮らしていける経済的な余裕が生まれた。
それでもお母さんは、いまだにつるかめ食堂で働いている。昔のまま、パートタイムで。

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