純情シンデレラ
「やっ!違うって!私、絶対妊娠なんかしてないよ!」
「でも恵子は最近、有栖川さんとよく一緒にいるじゃない」
「そんなに一緒にはいないよ。それに、有栖川さんとは友だちとしてつき合いがあるだけで、恋人同士じゃないって何度も言ってるでしょ?誤解しないで」
「本当か?」
「ホントホント。大体、お母さんもお父さんも、私が子どもを産めない体だってこと、忘れてない?」
「そうじゃないでしょ、恵子。お医者さんは、産めない“可能性が高い”とおっしゃったんだから。逆に言えば、産める可能性だってあるのよ」
「それでも私が子どもを産むことはないの。だって、有栖川さんとはもちろん、誰とも結婚しないから」と言ったとき、なぜか私は、いかつい顔をした松本さんのことを、脳裏に思い浮かべていた。

・・・子どもを産めない体だってことをあの人に言ったのは、もう2ヶ月以上前なのに。
なんで私は今頃になって、悲しいと思ってるんだろう。
それより、今にも涙が出そうになってるくらい悲しいと最後に思ったのは、一体いつだったか・・・忘れてしまった。

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