純情シンデレラ
４月という季節柄、外は比較的暖かいからなのか、車内には冷房も効いてないし、扇風機も回っていない。
おかげで、周囲の人たちそれぞれのにおいが、この狭い車内で入り混じって、漂って、留まっているような気がする。
あぁ、新鮮な空気が恋しい。
新鮮な酸素を吸いたい！
これが月曜から金曜まで毎朝続くのかと思うと、私の心は出勤初日から、すでにうんざりしていた。

明日からは、もっと早めの電車で行った方がいいのかもしれない。
それから、ヒールがあるパンプスなんて慣れてないもの履くより、普段から履き慣れているスニーカーを履いた方が踏ん張りやすいと思うから・・・通勤時だけでも、そうしようかな。
でも、それを言うなら、スーツだって着慣れてないんだし。
どちらにしても、スーツは着ることで慣れていくもの。
パンプスだってそう。履くことで慣れていくものだ。
数をこなすことで、「スーツに着られてる」から「スーツを着ている」雰囲気を醸し出せるようになっていって、いかにも「社会人」らしく見えるようになり・・・その分、初々しさが消えていく。

あぁ暑い。首筋から汗が流れてるような気がする。
お化粧なんてしなくて良かった。
じゃないと汗で剥がれちゃうかも。

と、そのとき。
私の腿あたりに、誰かの手が触れた気がした。

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