純情シンデレラ
バカだな、私。
この人の役に立ちたいと思ってるのに怒らせて。
この人の役に立てることがとても嬉しいのに、自分から全てを壊してしまって。
本当に、バカな私・・・。

もう、何もかもが嫌になった私は、一刻も早くここから逃げ出したくなった。
それに、そろそろ教習所に行かなきゃいけない時間でもあるし。

「わ、わたし・・用があるので、これで失礼します」と言って歩き出した私を、松本さんが呼び止めた。
松本さんの手が、少しだけ私の手に触れたことで、私は一瞬、その場に立ち止まった。

「・・・ごめんなさい」

あなたに何も言わなかったことで、あなたを傷つけてしまって。
あなたに・・寂しい想いをさせてしまって―――ごめんなさい。

私の気持ちの全てまでは言わなかったけれど、私の両目にうっすらと浮かんでしまった涙を、一番近くにいた松本さんだけには見えたのだろう。
私の口から自然に出ていた謝罪の呟きだけで、松本さんは、私の心中を察してくれたに違いない。
松本さんは、またスタスタと歩きだした私を、それ以上止めることはしなかった。

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