聖夜は戦場
聖夜は戦場
 
就職して一年目の冬、私はこの仕事に就いたことを本気で後悔した。

平日、土日、祝祭日や時間も関係なくシフトに縛られるホテルの仕事は、外から見ていたときよりずっとハードで、クリスマスシーズンともなれば、まさに戦場だった。

『仕事と俺とどっちが大事なの』

学生時代からつき合っていた彼にそう言われてふられたのは、もう三年も前のこと。

なんだか面倒くさい女みたいな言い方だなと一瞬思ったけれど、普段、時間が合わなくてろくにデートもできない状況がずっと続いていたから、彼も彼で限界に達していたんだろうと今は思う。

きっと、もちろんあなたよ、と即答できなかったのも、ふられた原因のひとつだったんだろう。


それでも、次の人は、次の人はと期待を寄せて、それから何人かとお付き合いをした。

けれど、仕事上、クリスマスは会う時間が取れないことを伝えると、やっぱりその時点で似たり寄ったりなふられ方をするか、自然消滅だった。


ああ、私はこの仕事に就いている限りまともに彼氏はできないんだ……。

そう悟りを開いてしまった、四年目の冬。

先日、この人こそはと性懲りもなく期待しては例のごとく撃沈した私は、どういうわけか、今もこのホテルで仕事を続けている。
 
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