聖夜は戦場
 
ホテルの仕事は通年して忙しい。

それはとてもありがたいことだけれど、なんといってもクリスマスは戦場だ。

そんな時期に経験値がそれなりにある人材が辞めてしまうという損失は、ハイスペックな主任を擁しても、どうやら補いきれるものではないらしい。

まあ、いくらハイスペックでも、体はひとつしかないしね。

まして今年は、私の同期や主任の同期、その他先輩も後輩も、なんでか結婚ラッシュだったし、寿退社してしまったスタッフの穴は、相当に大きい。


「次こそは、クリスマスに会えないことに理解を示してくれる彼を見つけますよ。って言っても、なかなか難しそうですけど」


パソコンに向き合い、カタカタとキーボードを打ち鳴らす主任に告げる。

働かなければ食べていけない、それすなわち、恋より命。

愚痴こそこぼしてしまったけれど、私だってそれは身に沁みてわかっている。

せめてクリスマスに寛容な彼が見つかるまでは、なにがなんでも死ぬわけにはいかない。


「それなら近くにいるじゃないですか」

「……はい?」

「僕とかどうですかね。この仕事ですからクリスマスには寛容ですよ?」


すると、主任がおかしなことを言ってきた。
 
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