聖夜は戦場
しばらく黙り込んでいると、再びカタカタとキーボードを打ち鳴らしながら主任が事もなげに言った。
チェックイン業務はもう終わっているというのに、主任はさっきからいったいなにを操作しているのだろうか。
普段はそんな雰囲気なんて微塵もないのに、今はものすごく男性的なギラギラ感が増殖中だ。
「今、キャンセルになった部屋を押さえました。まあ、キャンセルはたまたまだったんですけど、これもカウンター業務の特権ですかね。竹村さんが今までしたくてもできなかったクリスマスの過ごし方、仕事が終わったら今年は僕とどうでしょうか?」
「なっ!?」
「正直に言うと、竹村さんは男を見る目がないんですよ。こんなに近くにあなたに好意を寄せている男がいるっていうのに、外にばっかり目を向けて、こっち側は全然見ようとしない。今までは静観してきましたけど、僕だってそろそろ限界です。――今夜、全部奪ってもいいですよね?」
「っ……!?」
射るような目で見つめられて、言葉も出ない。
まさか仕事中に、あろうことか主任に、しかも今までは忌まわしい日でしかなかったクリスマスの夜に告白されるなんて、いったい誰が予想できるだろう。