聖夜は戦場
 
「お……っと。今からそんなにフラフラしててどうするんですか。これからのほうが長いのに、そんなんで抱かれる覚悟できるんですか」

「そそそ、そんなこと言われたって……」


返事もまだしていないのに抱く気満々って、いったい主任はどんな頭の中をしているの。

こっちは状況処理がまだ追いついていないっていうのに、勝手に部屋を押さえられるわ、数年分の独占欲をカミングアウトされるわ、頭の中がてんやわんやなんですってば。


「今、僕にドキドキしてるくせに? 恥じらわれるのは逆に煽られますけど、やせ我慢は可愛くないですよ? 素直に認めなさい、ドキドキしてるって」

「……うう」


そんな私に畳みかけるように、さらに主任が言葉を重ねる。

今は午後9時。

ロビーにはほとんど人がおらず、誰もカウンターの中が聖夜の戦場になっていることなど知るよしもない。

私たちをかくまうようにロビー中央に飾られた本物のもみの木のクリスマスツリーだけが、昼間と変わらずキラキラと電飾を瞬かせているだけだ。


「1103。仕事が終わったら来てください」


主任が押さえたその部屋番号は、果たして天国へのチケットなのか、それとも地獄へのチケットなのか。
 
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