聖夜は戦場
仕事終わりは午後10時。
彼氏にはふられたばかりで、友だちはみんな予定があって、極めつけは毎年仕事で、今年も間違いなくぼっちなクリスマスになる予定だったのに、これも主任の独占欲の表れなのだろうか……その部屋番号は私の誕生日と同じだ。
「Excuse me」
「yes」
フロントに外国人カップルのお客様が現れたので、流ちょうな英語で対応する主任を横目に見ながら、偶然と呼ぶにはどうも怪しい部屋番号の謎について考えを巡らせる。
英会話の勉強はしてはいるけど、まだまだ苦手で。
申し訳ないと思いつつ、3か国語くらい余裕で話せるハイスペックな主任にお任せだ。
「まさか主任、はじめから部屋を取っていたってことは……?」
「merry Christmas!」とにこやかに去っていった外国人カップルを見送ってから、いそいそと【1103】号室のカードキーを用意しはじめた主任に尋ねてみる。
この人のことだ、やりかねない。
「さあ? どうでしょうか?」
「っ‼」
けれど主任は、そう言って口の端を楽しそうにつり上げるだけだ。