聖夜は戦場
 
……もしかしたら私は、目の前でカードキーをひらひらと振るこの人に一生敵わないかもしれない。

そんな予感に囚われて思わずぶるりと身震いしてしまった、午後9時15分。

あと1時間もしないうちに今日の仕事が終わり、その後の予定も選択の余地皆無で強制的に決められている。

でも、逃げるに逃げられない状況を作られているのに、困惑こそすれど嫌な気がしないのは、今までの怒涛の種明かしの数々と、それから……。


「竹村さん」

「……は、はい」

「言いそびれていたんですけど、ずっと前から好きでした。だから、早く僕のものになってください」


ちょっと頬を赤らめてそう言う主任に胸がトクンと鳴ったから――なのかもしれない。





この仕事に就いている限り、バカみたいに忙しい聖夜は毎年戦場。

だけど、主任となら、そんな戦場も悪くない気がする、午後10時20分。


「よかった……。あんまり強引な誘い方だったから、来てくれないかと思ってました」


そう言って情けない顔で笑う主任の唇に、ドアが閉まりきるまで待てずにキスをした。





*END*
 
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