恋の音はすぐそばに
「お姉ちゃんが大切にしてる髪ゴムまで貸してくれたんです!」


「そうなんだ!…あれ、それ…」


じーっと髪ゴムを見つめる先輩。


その顔は何かを考えているようで、ここより遠くを見つめているように見えた。


「先輩?どうかたんですか?」


「っえ?う、ううん、ちょっと考えごとだよ〜っ!…あっ!映画館着いたよ!」


…明らかに何かを隠してる。


だけどそれを私が聞けるはずもない。


だって私と菜緒先輩は先輩後輩でお友達だから…。


「何を観るんですか?」


だから私は知らない振りをする。


「こ、れ♪」


それは私がずっと観たいと思っていた映画で、先輩と同じものが好きとわかってすごく嬉しいっ。


それから先輩は本当に紳士で。


『女の子にお金を払わしたら男が腐る!!』と映画代を出してくれて、その上ポップコーンまで買ってもらってしまった。


今日出してもらった分、次は私が何か返そう!




< 28 / 51 >

この作品をシェア

pagetop