失恋相手が恋人です
上の空な状態のまま、講義が終わって。
「食堂、行くんでしょ?」
萌恵に声をかけられた。
「……私も吏人と待ち合わせしてるから、一緒に行こう?
さっきの続きも話したいし……」
「う、ウン」
二人で並んで教室を出て、人気が少ない階段を選んで降り始めた。
「……沙穂、私、さっきの話を聞いて思っていたんだけど……。
沙穂はそれでいいの?」
「……え?」
足を止める私。
そんな私を見上げながら階下から萌恵が言う。
「沙穂が話してくれた桧山くんとの条件って、沙穂は桧山くんに一番近い、彼女みたいな存在にはなれるけど、絶対に彼女っていう特別な存在にならないってことだよね?」
気付いていなかったわけではない、萌恵の指摘。
名前で呼んでくれたり、笑顔を見せてくれたり、急激に変化した距離感だけど、肝心な部分は曖昧なままだ。
そう、私は告白しようと思って彼に会いに行ったけれど。
彼の涙に、彼のやるせない表情に何も言えなかった。
何も、私の気持ちなんて入り込む隙間もない気がしていた。
そして私の気持ちを言うことが、卑怯な気がした。
だから私は目茶苦茶な提案をした。
私は歩美先輩を好きな葵くんに失恋したから。
葵くんは歩美先輩に失恋したから。
勝手に失恋仲間で括って入り込んだ。
それすらも卑怯だったかもしれないけれど。
あの時はそれしか思い付かなかった。
頭がまわらなかった。
そう。
お互いに好きな人が出来たら別れる、なんて。
私はもう既に条件違反をしている。
「食堂、行くんでしょ?」
萌恵に声をかけられた。
「……私も吏人と待ち合わせしてるから、一緒に行こう?
さっきの続きも話したいし……」
「う、ウン」
二人で並んで教室を出て、人気が少ない階段を選んで降り始めた。
「……沙穂、私、さっきの話を聞いて思っていたんだけど……。
沙穂はそれでいいの?」
「……え?」
足を止める私。
そんな私を見上げながら階下から萌恵が言う。
「沙穂が話してくれた桧山くんとの条件って、沙穂は桧山くんに一番近い、彼女みたいな存在にはなれるけど、絶対に彼女っていう特別な存在にならないってことだよね?」
気付いていなかったわけではない、萌恵の指摘。
名前で呼んでくれたり、笑顔を見せてくれたり、急激に変化した距離感だけど、肝心な部分は曖昧なままだ。
そう、私は告白しようと思って彼に会いに行ったけれど。
彼の涙に、彼のやるせない表情に何も言えなかった。
何も、私の気持ちなんて入り込む隙間もない気がしていた。
そして私の気持ちを言うことが、卑怯な気がした。
だから私は目茶苦茶な提案をした。
私は歩美先輩を好きな葵くんに失恋したから。
葵くんは歩美先輩に失恋したから。
勝手に失恋仲間で括って入り込んだ。
それすらも卑怯だったかもしれないけれど。
あの時はそれしか思い付かなかった。
頭がまわらなかった。
そう。
お互いに好きな人が出来たら別れる、なんて。
私はもう既に条件違反をしている。