失恋相手が恋人です
「え?いつから?
ってか何で?」
訳がわからない、といった吏人くんの袖を萌恵が引っ張って。
後で話すから、今は黙っててっと耳元で言っていた。
葵くんは、周囲の視線も悲鳴もものともせず。
「じゃ、俺ら帰るわ」
そう言うやいなや、私の手を掴んで颯爽と食堂の出口に向かう。
ドクンッと心臓が再び大きな音をたてて。
……本日三度目の悲鳴が辺りに響く。
二度目に触れた葵くんの綺麗な手。
どんなに綺麗でも力の強さは男性のもので。
抗えない。
私の手をスッポリ包む高い体温が伝わる。
まさかの展開に私の思考回路はいっぱいいっぱいで。
引っ張られるままに食堂の外へ出た。
「な、な、何でっ」
手を繋がれたことも加わって、あまりの衝撃に口をパクパクさせる私に。
しれっと葵くんは言う。
「何でって、本当のことでしょ?
俺達今日から付き合ってるんじゃなかった?」
「そ、それはそうだけど……」
そんな大々的に公表しなくても……葵くんはそれでなくても注目の的なのに……。
私は今日までそんなに注目されたことはなかったのに。
明日からの私はきっと大学中の女子学生から鋭い視線を向けられる……。
「……あ、葵くんは人気者だから……」
やっとの思いでそう言うと。
「いや、皆が勝手に思い込んでるだけだし、騒いでるだけでしょ。
だって、俺、そもそも王子様って感じじゃないし」
「……」
「本当の俺を知っている人なんてすごく少ないよ。
沙穂みたいに、外見だけとか俺を好きとかじゃなくて、失恋したから恋人になろう、なんてこと言ってくる女の子なんていなかったし」
その一言がズキリと胸に刺さる。
……私も彼の外見に惹かれた一人だから。
外の生ぬるい風が私の頬にあたる。
それは私の今の立場のように居心地を悪くする。
どう返していいかわからず戸惑う私に。
「……そんな顔しない」
苦笑いみたいな表情でポンと空いている方の手を私の頭に軽く乗せる葵くん。
その優しい仕草が私の胸に小さな痛みを残した。
ってか何で?」
訳がわからない、といった吏人くんの袖を萌恵が引っ張って。
後で話すから、今は黙っててっと耳元で言っていた。
葵くんは、周囲の視線も悲鳴もものともせず。
「じゃ、俺ら帰るわ」
そう言うやいなや、私の手を掴んで颯爽と食堂の出口に向かう。
ドクンッと心臓が再び大きな音をたてて。
……本日三度目の悲鳴が辺りに響く。
二度目に触れた葵くんの綺麗な手。
どんなに綺麗でも力の強さは男性のもので。
抗えない。
私の手をスッポリ包む高い体温が伝わる。
まさかの展開に私の思考回路はいっぱいいっぱいで。
引っ張られるままに食堂の外へ出た。
「な、な、何でっ」
手を繋がれたことも加わって、あまりの衝撃に口をパクパクさせる私に。
しれっと葵くんは言う。
「何でって、本当のことでしょ?
俺達今日から付き合ってるんじゃなかった?」
「そ、それはそうだけど……」
そんな大々的に公表しなくても……葵くんはそれでなくても注目の的なのに……。
私は今日までそんなに注目されたことはなかったのに。
明日からの私はきっと大学中の女子学生から鋭い視線を向けられる……。
「……あ、葵くんは人気者だから……」
やっとの思いでそう言うと。
「いや、皆が勝手に思い込んでるだけだし、騒いでるだけでしょ。
だって、俺、そもそも王子様って感じじゃないし」
「……」
「本当の俺を知っている人なんてすごく少ないよ。
沙穂みたいに、外見だけとか俺を好きとかじゃなくて、失恋したから恋人になろう、なんてこと言ってくる女の子なんていなかったし」
その一言がズキリと胸に刺さる。
……私も彼の外見に惹かれた一人だから。
外の生ぬるい風が私の頬にあたる。
それは私の今の立場のように居心地を悪くする。
どう返していいかわからず戸惑う私に。
「……そんな顔しない」
苦笑いみたいな表情でポンと空いている方の手を私の頭に軽く乗せる葵くん。
その優しい仕草が私の胸に小さな痛みを残した。