失恋相手が恋人です
あの後。
駅まで向かうと言う桐生くんと一緒に帰った。
とりとめのない話を冗談混じりに話してくれる桐生くんはとても話し上手で、さっきまでの少し下がり調子だった気分が和らいだ気がした。
その日を境に。
グループワークや講義の後、浅葉くんや萌恵も一緒に残ったり、皆で一緒に帰ったりを何度か繰り返していた。
「今日は残る?」
萌恵が私に聞いた。
最近ずっとグループワークの続きをして、インターンの準備もしていて、私は少し疲れていた。
今日は早く帰ろうかな……と思い、返事をしようとした時。
「……沙穂、終わったなら帰ろう」
のんびりした、それでいて有無を言わさない低い声音が響いた。
反射的に、開け放した教室の入口に目をやると。
扉に片手をかけて立っている葵くんがいた。
久しぶりに見る葵くんは、少し痩せたようにみえた。
「沙穂」
もう一度葵くんがゆっくりと私を呼ぶ。
その声にハッとした私が返事をする前に。
「桧山、あれ?
今日来てたの?」
いつもと変わらない調子の桐生くんが声をかけた。
葵くんはそんな桐生くんを一瞥して。
「……別に。
沙穂が来てる日だし」
とだけ言った。
少し不機嫌な低い声音で。
私は葵くんの機嫌をはかりかねて、気持ちが足踏みをしていた。
「沙穂」
もう一度、今度は少し焦れたように彼が呼ぶ。
「……は、はいっ」
ここは素直に従った方がいいと本能的に悟った私は荷物をまとめて葵くんに駆け寄る。
葵くんは私を見て、グイッと手を引っ張った。
「あ、あの、葵くん?
えっと萌恵、ごめん、またね」
手を引っ張られているので、それだけ言うことが精一杯だった。
駅まで向かうと言う桐生くんと一緒に帰った。
とりとめのない話を冗談混じりに話してくれる桐生くんはとても話し上手で、さっきまでの少し下がり調子だった気分が和らいだ気がした。
その日を境に。
グループワークや講義の後、浅葉くんや萌恵も一緒に残ったり、皆で一緒に帰ったりを何度か繰り返していた。
「今日は残る?」
萌恵が私に聞いた。
最近ずっとグループワークの続きをして、インターンの準備もしていて、私は少し疲れていた。
今日は早く帰ろうかな……と思い、返事をしようとした時。
「……沙穂、終わったなら帰ろう」
のんびりした、それでいて有無を言わさない低い声音が響いた。
反射的に、開け放した教室の入口に目をやると。
扉に片手をかけて立っている葵くんがいた。
久しぶりに見る葵くんは、少し痩せたようにみえた。
「沙穂」
もう一度葵くんがゆっくりと私を呼ぶ。
その声にハッとした私が返事をする前に。
「桧山、あれ?
今日来てたの?」
いつもと変わらない調子の桐生くんが声をかけた。
葵くんはそんな桐生くんを一瞥して。
「……別に。
沙穂が来てる日だし」
とだけ言った。
少し不機嫌な低い声音で。
私は葵くんの機嫌をはかりかねて、気持ちが足踏みをしていた。
「沙穂」
もう一度、今度は少し焦れたように彼が呼ぶ。
「……は、はいっ」
ここは素直に従った方がいいと本能的に悟った私は荷物をまとめて葵くんに駆け寄る。
葵くんは私を見て、グイッと手を引っ張った。
「あ、あの、葵くん?
えっと萌恵、ごめん、またね」
手を引っ張られているので、それだけ言うことが精一杯だった。