失恋相手が恋人です
廊下を突っ切って、外に出ても葵くんは黙ったまま先を歩いていて。
私と足の長さが違う葵くんに、引っ張られて走り続けていた。
「葵くん、葵くんっ」
何度も呼びかけるけれど、無視される。
すれ違う学生に怪訝な顔で見られながら。
ひたすら引っ張られ。
「葵くん、ほ、本当に。
手、痛い、痛いから」
大きな声で抗議をして、大学の最寄り駅前の交差点でやっと止まってくれた。
「……ごめん」
それだけ言って葵くんはやっと手を離してくれた。
……気不味い沈黙。
「……何かあったの?」
沈黙に堪えきれずに私が尋ねると。
「……別に。
何で?」
視線を逸らされる。
「何でって……
いきなり迎えに来てくれることなんてなかったから」
「彼氏が急に迎えに来ちゃダメなルールだった?」
どことなく棘のある言い方をされる。
「……そんなことないよ、う、嬉しかったけど……」
「……もう少し桐生と一緒にいたかった?」
「……え?」
「沙穂、好きな人はできた?」
急に真剣な瞳で聞かれた。
普段は優しげで明るい焦げ茶色の瞳にどこか、苛立ちが滲んでいる。
相変わらずの整った顔立ち。
だけど、今日はいつもと違う表情が見え隠れする。
「……い、いないよ。
何で?」
それしか言えない。
私の気持ちが気付かれた?
でも、それならどうしてこんなに苛立った表情をするの?
気持ちを隠していたことがばれた?
頭の中に、たくさんの疑問符が湧く。
心の中は焦りで渦巻く。
私と足の長さが違う葵くんに、引っ張られて走り続けていた。
「葵くん、葵くんっ」
何度も呼びかけるけれど、無視される。
すれ違う学生に怪訝な顔で見られながら。
ひたすら引っ張られ。
「葵くん、ほ、本当に。
手、痛い、痛いから」
大きな声で抗議をして、大学の最寄り駅前の交差点でやっと止まってくれた。
「……ごめん」
それだけ言って葵くんはやっと手を離してくれた。
……気不味い沈黙。
「……何かあったの?」
沈黙に堪えきれずに私が尋ねると。
「……別に。
何で?」
視線を逸らされる。
「何でって……
いきなり迎えに来てくれることなんてなかったから」
「彼氏が急に迎えに来ちゃダメなルールだった?」
どことなく棘のある言い方をされる。
「……そんなことないよ、う、嬉しかったけど……」
「……もう少し桐生と一緒にいたかった?」
「……え?」
「沙穂、好きな人はできた?」
急に真剣な瞳で聞かれた。
普段は優しげで明るい焦げ茶色の瞳にどこか、苛立ちが滲んでいる。
相変わらずの整った顔立ち。
だけど、今日はいつもと違う表情が見え隠れする。
「……い、いないよ。
何で?」
それしか言えない。
私の気持ちが気付かれた?
でも、それならどうしてこんなに苛立った表情をするの?
気持ちを隠していたことがばれた?
頭の中に、たくさんの疑問符が湧く。
心の中は焦りで渦巻く。