失恋相手が恋人です
お互いに少し落ち着いて。
手つかずだった飲み物をお互いに口にした。
葵くんはアイスコーヒー、私はアイスキャラメルラテ。
ふっと目があって笑いあった時、葵くんがさりげない調子で聞いた。
「沙穂が失恋した相手って……誰?」
カラン……と氷が涼しげな音をたてる。
「ごめん、言いたくなかったらいいんだ。
ただ……今までそのこと、聞いたことなかったなって思って気になってさ」
申し訳なさそうに言う葵くん。
この数時間で気づいたけれど、彼は思ったことを真っ直ぐにぶつけてくる人だ。
飾らずにそのままで。
そんな真っ直ぐな葵くんに。
あなたです、と言えたらどれだけ楽だろう?
ずっと自分でも気付かないくらい長い間あなたを見つめてきたって。
……ずっと好きだったって。
言ったらあなたは、きっと離れていく。
こんな風に。
甘いものが苦手なこと。
近くで見ても指が細くて長いことを。
知ることもできなくなる。
いつもと同じ私の勝手な堂々巡り。
「……葵くんの知らない人だよ……」
一番疑われない答えを俯いて口にする。
「俺らと同じ大学の人?」
「……うん」
それだけは事実。
せめてもの本当のこと。
手つかずだった飲み物をお互いに口にした。
葵くんはアイスコーヒー、私はアイスキャラメルラテ。
ふっと目があって笑いあった時、葵くんがさりげない調子で聞いた。
「沙穂が失恋した相手って……誰?」
カラン……と氷が涼しげな音をたてる。
「ごめん、言いたくなかったらいいんだ。
ただ……今までそのこと、聞いたことなかったなって思って気になってさ」
申し訳なさそうに言う葵くん。
この数時間で気づいたけれど、彼は思ったことを真っ直ぐにぶつけてくる人だ。
飾らずにそのままで。
そんな真っ直ぐな葵くんに。
あなたです、と言えたらどれだけ楽だろう?
ずっと自分でも気付かないくらい長い間あなたを見つめてきたって。
……ずっと好きだったって。
言ったらあなたは、きっと離れていく。
こんな風に。
甘いものが苦手なこと。
近くで見ても指が細くて長いことを。
知ることもできなくなる。
いつもと同じ私の勝手な堂々巡り。
「……葵くんの知らない人だよ……」
一番疑われない答えを俯いて口にする。
「俺らと同じ大学の人?」
「……うん」
それだけは事実。
せめてもの本当のこと。