失恋相手が恋人です
目の前の角を曲がったら私のマンションが見える、という道で。
それまで他愛ない話をしていた葵くんが急に黙りこんだ。
「葵くん?」
その様子に不安になる。
「沙穂、俺、やっぱりさ」
口を開いた葵くんを見上げると。
「沙穂が好きだよ」
今まで見たことがないくらい、真剣な眼差し。
真っ直ぐに私を見つめるその強い視線は痛いくらいで。
だけど恐いくらいに綺麗で。
私は目が離せなくなる。
葵くんは左手に荷物を持っていて、右手は私と繋いでいて。
何も拘束されていないのに。
身体が何かに絡めとられたかのように動けなくなる。
葵くんが私を好き……?
言われた言葉を頭の中でリピートする。
足を止めた葵くんは、繋いでいた手をギュッと自分の方に引き寄せた。
目の前に葵くんの温かな胸。
片腕がまわされた私の背中。
私の首筋に顔をうずめて。
「……好きなんだ」
もう一度言った。
それはずっと欲しかった言葉。
ずっと憧れた言葉。
そう言われる女性になりたいと願っていた。
そして何より私があなたに伝えたかった言葉。
だけど、伝える資格がない私に。
嘘をついてばかりの私が。
葵くんの気持ちを受け取っていいの……?
だけど私。
どうしよう。
もうどうしようもないくらいに葵くんが好き。
声に出すつもりもなく、出している意識もなかったのに。
私の心は容量オーバーだったみたいで。
有り余る「好き」を。
葵くんに伝えていた。
それまで他愛ない話をしていた葵くんが急に黙りこんだ。
「葵くん?」
その様子に不安になる。
「沙穂、俺、やっぱりさ」
口を開いた葵くんを見上げると。
「沙穂が好きだよ」
今まで見たことがないくらい、真剣な眼差し。
真っ直ぐに私を見つめるその強い視線は痛いくらいで。
だけど恐いくらいに綺麗で。
私は目が離せなくなる。
葵くんは左手に荷物を持っていて、右手は私と繋いでいて。
何も拘束されていないのに。
身体が何かに絡めとられたかのように動けなくなる。
葵くんが私を好き……?
言われた言葉を頭の中でリピートする。
足を止めた葵くんは、繋いでいた手をギュッと自分の方に引き寄せた。
目の前に葵くんの温かな胸。
片腕がまわされた私の背中。
私の首筋に顔をうずめて。
「……好きなんだ」
もう一度言った。
それはずっと欲しかった言葉。
ずっと憧れた言葉。
そう言われる女性になりたいと願っていた。
そして何より私があなたに伝えたかった言葉。
だけど、伝える資格がない私に。
嘘をついてばかりの私が。
葵くんの気持ちを受け取っていいの……?
だけど私。
どうしよう。
もうどうしようもないくらいに葵くんが好き。
声に出すつもりもなく、出している意識もなかったのに。
私の心は容量オーバーだったみたいで。
有り余る「好き」を。
葵くんに伝えていた。