失恋相手が恋人です
多忙な日々を送っている葵くんとは、お互いの近況報告のようなやりとりしかできずにいる日々が続いていた。

私自身も課題や就職活動に追われていたせいもあり、なかなかゆっくり会ったり話すことができずにいた。

気が付けば日差しが暖かくなり、厚手のコートを着なくなり、大学生活最後の春が間近に迫っていた。

結局……葵くんは留学することになった。

何度もお父様や担当教授、大学側とも話し合ったと聞いた。

成績優秀だった葵くんは、ほぼ卒業に必要な単位は取得済みだったため、不足分は特例として、アメリカから教授が出した課題レポートを提出することで認められるそうだ。

おかげで、退学ではなく、きちんと卒業ができると話していた。

就職活動も取り止めて粛々と葵くんの留学準備は進んでいった。

少なくとも三年はアメリカに住むことになると言われた時、私は鋭利な刃物で切られたかのように胸が痛かった。

休暇には必ず帰国する、電話もするからと何度も言われたけれど私の不安はぬぐえずにいた。

そもそも葵くんと私の置かれた状況が違いすぎていて、立場の違いを改めて感じずにはいられなかった。

やっぱり私が葵くんの彼女でいること自体が間違いのような気がしてならなかった。

葵くんは私という存在がいることをご両親に話したと言っていた。

けれど、どんな風に説明したのかということは教えてくれなかったし、ご両親が何とおっしゃっていたかということを私も詳しく聞けずにいた。

葵くんの留学の話は学内で大きな噂になり、ほぼ学内に顔を出さなくなった葵くんに代わって、興味本意で私に聞いてくる人も少なくなかった。

私は笑みを張り付け、不安を押し込みながら話せることを曖昧に答えていた。


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