失恋相手が恋人です
私はもう必要ない。

私の恋はもう終わり。

元々叶う筈のない恋だった。

「……わかって……いたのに」

涙が止まらない。

「葵くん、葵くん……っ」

半ば叫ぶように何度も何度も名前を呼んで。

「……好きなの……っ。
本当は……離れたくなんかないよ……」

吐き出した言葉は誰もいない部屋に吸い込まれていく。

沙穂、好きだよ。

沙穂、待ってて。

言ってくれた言葉の数々が泡のように弾けて消える。

「……ごめんなさい……っ」

それを口にすることが精一杯。

こんな思いをするくらいなら最初から嘘をつかなければ良かった。

萌恵に言われたのに。

無理だって言われたのに。

夢を見てしまったから。

だからこれは罰。

私はそのままずっと泣き続けていた。



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