桜龍
行くところがなかったので、とりあえず、ゆうくんの部屋に避難してきた

『とりあえず、ここにいれば大丈夫じゃない?』

さすがに、ここまでは来ないだろう…

「そうだと思うよー!ここに入るのは初めてだなー!ここってゆうくんの部屋だよね?」

来たことないのか…

『そうらしいよ。子供らしい部屋だよね。』

大体の物は片付いているが、やはり所々におもちゃや人形が転がっている

ベットに乗っている人形に見覚えがある

『あれ?これって…』

「ん?ベットにある少し大きめのクマの人形?」

確かこれって…

『あたしが、ゆうくんに初めてあげた人形なんだよね…』

こんなに大事にしてくれてるんだ…

「へぇ、紘ちゃんが初めてあげた人形なんだねっ!」

数年前にあげたから、もうボロボロになってるのかと思ったら全然キレイだった

『少し色落ちはしてるけど、ほぼ買ってあげた状態と変わらない…きっと、ゆうくんが大事にしてくれてたんだなぁ…』

数年もあってなかってのに、すぐに会ってあたしのことを「ママ」と呼んでくれてこの人形も大事にしててくれたんだね…

「ゆうくんにとって、母親はきっと紘ちゃんなんだよ。大事なのは産んだ親じゃない。愛してくれる人なんだよ。」

涼が悲しそうな顔で微笑む

『そうかもしれないね…』

あたしは、ゆうくんを息子として愛している。

『涼は、愛してもらえなかった?』

この表情はきっと親に愛してもらっていないと思ってる表情な気がする

涼は、悲しく微笑み

「紘ちゃん」

『ん?』

涼は、思い出すように

「俺の昔話に付き合ってくれない?」

そう言ったので頷いた

「ありがと。」


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