桜龍
琉依斗と話しながら、部屋へ向かった

『久しぶり、調子はどう?』

他の組員の前では上下関係上仕方ないことだが

歳が近い奴らとはタメで話す

「かわんねぇよー!」

軽く返した

『そう、ならよかった』

かわんねぇか…

「お前はなんか警戒してるような感じがするぜ?何に警戒してんだよ」

こいつは、人の感情に敏感だ

『まぁ、ここに居る以上警戒しておいて損はしねぇだろ』

「ふぅん」

聞いておいて興味ねぇような返事だな…

「じゃあ、俺はここで!」

部屋に着いた

一呼吸おいて、部屋の引き戸を開けた

――カラカラ

『失礼します。』

軽く一礼して、引き戸を閉めた

「あぁ、おかえり。」

聖さんと栞菜さんが隣で座っている

「おかえりなさい。紘!待ってたわよ!」

笑顔で迎えてくれた

『ただいま!父さん、母さん』

そう言えば、2人はにっこり微笑んでくれた

「話があるんだろう?座れよ」

座るように促したので座った

「さて、霜月から聞いたかもしれんが…俺はお前を後継者には無理にはしねぇよ」

やっぱりね…分かってたか…

『私が後継者になります。他の組にも認めさせます。あたしが、双龍会の組長になり、天龍会を復活させます。そして、あたしは天龍会組長になり、双龍会組長は、適任者に任せます。それを伝えるために帰ってきました。』

意思をしっかりと伝えた

「紘、簡単に言ってるけど…そんなに、簡単な事じゃないのよ、後継者として他の組長に認められるのは…そして、天龍会の事も…」

母さんが心配そうに諭した

『もちろん、簡単な事じゃないことは分かっています。けれど、あたしが天龍会の後継者であるの事は、間違いない事実だし、それにあたしが強いとして認められれば他の組長も認めざる得ないでしょう?』

2人をしっかり見れば

「この世界は強い者が上に立つ…それは、男女関係ない…」

そりゃ、そうだ

『この意志は変わりませんから。では、失礼します。』

正座のまま軽く礼をして出ていこうと思ったが

「まぁ、待て!栞菜、少し外してくれ」

あたしに待てを言い渡し、母さんに出て行くように言った

「えっ!…わかった…」

一瞬驚いたが父さんの目を見て了承した

きっと、父さんの意図が分かったのだろう…

母さんが部屋から出ていった

「紘、隼人の代わりにならないといけないって思ってんならやめろ!隼人だって、そんな事望んじゃねえよ!」

あたしの目をしっかり見て言い放った

『前まではそうでしたが、今は違う。絶対的な権力を手に入れる為。そして、あの親達から連夜を守る。その後、天龍会を蘇らせる。』

確かに前までは隼人の代わりはあたしがしなきゃいけないと思ってた

けれど、今はあの親達に見せつけてやりたい

あたしが、人形じゃないことを!

「そうか…」

諦めがついたような顔をしてこの事については何も言わなかった

『じゃあ、あたし連夜が心配だから行くね!母さん呼んでこようか?』

どうせなら、少し話してから行くのもいいだろう

「いや、いいや。どうせ庭にいるだろう」

そう言って引き戸を開けると母さんが庭に立っていた

こちらに気付き庭から戻ってきた

「終わった?」

父さんに近づき聞いた

「あぁ」

並ぶとほんとにおしどり夫婦って言葉が似合う

「そっか…あっ!紘!さっき霜月に果物渡したからよかったら食べてね!」

優しく微笑んでくれた

『うん、ありがとう。』

そう言ってその場を離れた

< 133 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop