桜龍
――ガラッ

暗いな…

魁人の後ろに続いて歩いていると

『えっ!』

何かにつまづいた…

転ぶ!!

そう思って衝撃を覚悟したのに…

あれ?

「大丈夫か?」

魁人が転ぶのを阻止してくれたみたい

『ありがと…』

はぁ、暗いとこは慣れてたはずなんだけどな…

最近は暗いとこで行動しないから鈍ってんのかな?

気を引き締めなきゃ

――グイッ

「こうすれば、大丈夫だろ?」

魁人が手を引いてくれた

『あ、うん!ありがと!』

暗闇に、目が慣れてくると…

『あっ、貞子だ!』

後ろ姿から振り返った貞子

井戸から出てきた落武者

後から追ってくるゾンビ

『わぁ、すごいメイクだねー!』

後ろを振り返って、ゾンビの顔をマジマジと見ると逃げられた

『あっ、逃げられちゃった…』

残念そうにいうあたしに

「おい、あれって…」

魁人が前を向いて言った

ん?

魁人のせいで前が見えなかったので、少しズレて見ると

『あれって、涼?』

あんなとこに立ってどうしたんだろう?

『もう、やっぱり花音置いてきんだ!』

後でお説教だな

「行くか…」

『うん』

涼に向かって歩いていった

『涼、どうしたの?』

調子悪いのかな?

「その声、紘ちゃん?」

『うん、どうしたの?調子悪いの?』

涼の肩が震えた

「早く逃げて!早く!」

ん?

バッとこちらを振り向いた涼

『あっ!』

あたしは、振り返った涼を見て

『ふっ…あはははは!涼の顔!あははは!』

あたしは、お腹を抱えて笑った

涼の顔がゾンビの顔になっている

「えー、紘ちゃんには効かなかったか…魁人、どう?」

残念そうな声だ

ゾンビメイクのおかけで、あまり表情は、分からなかったが声でそう感じた

「…このために1番に入ったのか…」

魁人は、納得したかのようにため息をついた

「うん!どう?」

涼は、魁人にゾンビメイクの顔で見た

魁人は興味なさそうに横を向いた

『あははは!どうやったの?』

涼の綺麗な顔が、恐ろしいゾンビの顔になっている

「ふふふ、ありがと!でも、秘密だよー!」

恐ろしいゾンビの顔なのに、似合っている

『えー、残念!あははは!おもしろーい!』

あたしは、笑いが止まらない

「うーん、紘ちゃんが怖がってくれると思ったのになー!あの3人みたいに!」

3人って

『怖がったの?あの3人?』

ヤバイ…笑いが止まんない…

「うん、俺の顔見たら走って逃げてったよ!その行動が面白くて!」

あー、もしかして

『花音が涙目だったのって…』

「うん、お化け屋敷入って、このメイクのためにすぐにはぐれたから!そして、最後にこれね!」

なるほどね…

『でも、すごいなー!触ってもいい?』

近付いてしっかり見てみた

「うーん、汚れちゃうかもよ?」

涼が、悩んでる

『そうなの?』

でも、触ってみたい!

好奇心の方が勝ってしまったので、涼の顔へ手を伸ばした

ぷに

頬の皮膚が剥がれたようなものは、柔らかい

「ふふふ、どう?」

あたしは、目が抉れている部分も触ってみた

ざり

これは、これですごい…

『へぇー、すごいな…』

感心してしまった…

「満足した?」

『うん、ありがとね!』

特殊メイクなんて、すごいなー

「じゃあ、戻してくるから先に行ってて!」

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