桜龍
期待ハズレだ…

『別にあたし楽したいとか思ってないんだよね、むしろ今の仕事量を増やされても構わない。こんな簡単な仕事なんて3時間もあれば全て終わるし、自分のスキルアップにも繋がらない。やるんだったら、もっと難しい案件の仕事の方がいい。てか、よっぽどあんたと組んで仕事こなしてるより、あたしには価値がある。』

3時間なんて自分の1日の睡眠時間を少し減らせばいいだけの話

だって、3年分と言われている仕事があたしにとったらたった数時間で終わってしまうゲームと一緒だ

そんなのあたしにとったら、何の魅力もない

「あたしより価値があるですって…」

『うん、もっと難問の仕事の方が価値がある。』

「絶対にあたしと組まなかったことを後悔しますよ!」

『あたしは、自分で決めた事なら後悔しない。』

あたしは、もうあんな後悔は二度としたくないと思い、自分で決めた事は後悔しないように生きてきた

正しい選択なんて誰にも分かりはしない

答えのないものなのだから

けれど、きっとここでこの子をあたしのパートナーと認めてしまったら認めてしまったことを後で、絶対に後悔すると思う

「そんな綺麗事よく言えますね!この世界で何年生きているんですか!あたし達ハッカーの世界は綺麗事なんてただのゴミと一緒ですよ!」

綺麗事かぁ…

『あんたにとってはそうかもしれないけど、でもあたしにとっては正しい選択だと思ってるよ。』

「ぐっ…」

もう一度警告しておこう

『もう一度だけ言うけど、自分の力を過信し過ぎると大きな失敗へと繋がる。今の内に自分の力がどれくらいなのか再確認した方がいいよ。この世界で生き残りたいならね。』

「あたしが失敗なんて有り得ません。この世界で生きていけなくなるのは先輩の方じゃないですか?Tigerさんなんかを待っちゃって…バカじゃありませんか?」

この子は必ず大きな失敗を犯すな…

『君にとってはバカだって思うかもしれないけど、あたしはTigerを待つことを無駄とは、思ってないから。』

軽く笑いながら答えたあたしがこの子の癪に触ったのか

「アホらしい…バカな先輩ですね!」

――ピッ

通話を向こうから切られた

笑えちゃう

『この世界を誰よりも深く、濃く関わったあたしが綺麗事なんて言わねぇよ。言える訳ねぇよ。』

今更この世界が綺麗事なんかが通用しない事くらい誰よりも分かっている

あたしが言ったのは綺麗事じゃない

確信があるからこその言葉だ

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