爆走姉貴ー星路の苦悩ー
「いらっしゃいませ」



……おや?




黒いドアの向こうは、考えていたよりも品が良い?


程よく落とされた照明、磨き上げられた光る床。


フロアを囲む様に並ぶボックス席は、座り心地が良さそうなソファ。

半分以上埋まる席では、華やかなドレスに身を包んだ若い女性が、客である男性と談笑している。



想像していた程にギラギラした雰囲気ではない…。





「テツですけど、ママいます?」

雅治が、ボーイ?らしき男と話している。

つか、テツ?


「俺の源氏名、小池徹平に似てるからテツ。先輩に付けられた」


そうなのか。
戸籍以外にも名前を持てる環境…危険だ。




待つ事数分。
俺達の前に現れたのは、三十代半ばくらいの女性。


「テツちゃん、来てくれたの」
「来るって言ったじゃないすか」



雅治の腕に触れ、穏やかに笑う女性。
艶やかな黒い痩身のロングドレスに身を包んだ美人だ。


この人がママか。
ママって事は、このフィールドのボスなんだな。


ならばきっと、最強の武器を隠し持つ者。

巻き込まれない様にしなくては!
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