爆走姉貴ー星路の苦悩ー
「星路、ママを睨むな」
「見抜こうとしているんだよ」
「何をだよ」



何か事が起きた時は、逃げ道を確保しなくては。
後でトイレも見ておこう。

用心に越した事はないからな。




「今日は友達も一緒なのね」
「うん、大学の友達」


雅治は、大学生としてバイトをしているんだ。
ホントにバレたらヤバイよなぁ…。


「大学の?二人とも男前だから、テツちゃんのバイト先の友達かと思っちゃった」


さすがだな。
さりげなく男をアゲる台詞。
こういう言葉に騙されるんだな、男は。




「席は静かな方がいいかしら?」


気遣いに見せかけた、逃げられぬ様にとのトリックか?
テクニシャンだ。




「テツちゃんはフルーツが好きだって言ってたわよね?」
「覚えてたんすか」
「当然でしょう?いい男の好みは覚えてるわよ」



あなただけ感をあおる戦法か。
デート商法としては初歩だが、あなどれない戦略だな。



騙されない。
俺は騙されないからなっ!




「つか星路、俺の背後でブツブツ言うの止めてくれ」
「……は」



振り向いた雅治に言われ、我に返った。
< 39 / 114 >

この作品をシェア

pagetop