爆走姉貴ー星路の苦悩ー
ちょっと呼んでくるからと、美月はテーブルを離れた。


このまま戻らない事を祈りつつ、俺は蔵野さんが注いでくれた烏龍茶を一口飲み下す。






「しかし、リンちゃんが星路の姉貴だとはなぁ」


雅治がしみじみと呟き、天井を見上げている。


「俺も驚いたよ、姉貴だって知った時はさ」


拓也?

美月の狂暴さには驚かなかったのか?
俺の姉貴という事実よりも、そっちの方がショッキングだと思うけど?




「美月さんだっけ?本名」
「……まぁ」


正確には、瑞樹。




「マジ驚いた。姉貴なんて予想外だよ、なぁ?」
「はい、自分も予想外っす」
「?!」



蔵野さんが話に混じってる!

つかあなた、つい数十分前が初対面じゃないですか?!
何を数年越しの友人口調で!!




「しかし自分は、姉さんの男気に惚れましたから」



恍惚とした表情で、しみじみと語る蔵野さん。



男気……。
ある意味間違ってはいないな。

でもそんな正義感ある言葉を美月に使うのは、かなり相応しくない……。

むしろあいつは正義の裏側の人間…邪悪の権化。


裏工作を得意とする人間ですから。


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