爆走姉貴ー星路の苦悩ー
「あたしも辛いんだ……あの時の星路の姿…」



厚めの唇を噛み締め、吐き出す様に美月は呟く。





「あの……星路が気を失い……エッグとの口づけを交わす瞬間が……あたしの美意識を狂わせる」
「自分自身が招いた苦しみだろ!!」
「歯グキが振動しているのかと思うくらいに、激しく醜いシーン…あまりの激しさに、星路は失禁しそうだった」
「ナレーションするな!」


苦しいのは俺の方だ!

馬鹿じゃないか?!
やらせたのは美月だろうが!

知らされた俺の気持ちはどうなんだよっ!





「そう興奮するな、星路。忘れられないんだろうが」
「何を?!」


むしろ過去を巻き戻して消却したいっての!



「とりあえず、明日美鈴ちゃんと会って来い。すでに星路を向かわせると美鈴ちゃんには伝えてある」
「すでにそこまで?!」
「そうしないと、馬鹿でグズでナメクジみたいにねっとりと悲劇に浸るキモい弟は動かないからな」


普通、実の弟にそこまで言う?



「だからこそ、この愛の天使である美月様がセッティングしてやったんだ。崇め立て奉れ」


何て傲慢で思い上がった、押し付けがましい心遣いだ。

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