爆走姉貴ー星路の苦悩ー
できるだけ自然に言ったつもりだったが、俺の思いとは逆に、美鈴にかけた声は低いものになっていた。




「……うん」




今にも泣き出しそうな顔で、俺の向かいに座る美鈴。

気まずい………。






「ほら…何か頼めば?」
「うん…」
「コーヒーがうまいらしいし」
「うん…」



顔を上げないまま、美鈴はテーブルに視線を落としている。




………どうしよう。




別に責める気持ちは無い。

美鈴には美鈴の理由ってもんがあるはずだし、ただそれを聞ければ……と思ってた。



けど、本人を前にすると、何から聞けばいいのかわからない。


いっそ、聞かずにうやむやにした方がいいのかという気持ちさえ沸き上がる。




こんな、悲しそうな美鈴を見ると余計に。








「ご注文はお決まりでしょうか?」



沈黙する重い空気の中、店員のオーダーを求める声が響く。




「ご注文は?」
「ちょっと待ってて下さい」
「ご注文は?」
「ちょっと待ってて」
「ご注文…」
「だから待ってろっつってんだろっ!」




しつこいリピートにキレた俺は、店員を怒鳴りつけ……って……?
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