爆走姉貴ー星路の苦悩ー
「ありがとう、蔵野さ………?!」



蔵野さんを見上げ、お礼を言いかけた俺の声は詰まった。



何だ?
今度は何なんだ?

何か蔵野さん怒ってるぅ?!





先刻までのにこやかさはどこへやら。
蔵野さんは目を吊り上げ、一文字に閉じられた唇を軽く噛み締めつつ……小刻みに震えてるんですけど!





「蔵野…さん?」


蔵野さんは、手に持つ木製のトレーを爪でガリガリ引っ掻きながら呼吸を乱している。

……何の発作ですか?



「……星路さん」
「っはい!」

何ですか?!

「こちらのお連れ様は…やはり彼女さんっすか?」


聞きながら、美鈴を指差す蔵野さん。
爪の間にトレーの木屑がみっちり詰まってる…。

どんだけ力自慢なんだよ、あんた。





「まぁ、そうっす」


俺の返答に頷いた蔵野さんは、今度は舐める様に美鈴を睨み始めた。

一体何なんだよ?


つか美鈴が怯えてんじゃん!
ただでさえ恐い顔なのに、睨むなよ!




思っていても、蔵野さんが怖くて強く言えない俺…。

けど、美鈴を怯えさせるのは見逃せないよな?
彼氏としては。





「あのですね、蔵野さん」
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